はじめてのステージ

はじめてのステージは高校の文化祭だった。オール制服の学校だったので、ステージに立つ前に何かステージ衣装になりそうなものを私物から探そうと自分のロッカーを漁った。体育館に満員の全学年の生徒がいて、ステージ袖に立ってステージ衣装として着たのは、ロッカーに入っていた「化学の実験の白い服」だった。ジュンスカイウォーカーズの「歩いていこう」を登場して間もなく歌ったのだが、「化学の実験の白い服」を見た全校生徒は何か不気味な人を見るような白い目となり、さっきまで賑やかだった体育館が急に静かになった。そして歓声がくると思いきや、ブーイングが全校生徒から飛びかった。それでも「化学の実験の服」を着て熱唱する僕に、ギターで伴奏してくれる友人もいて、あの時５００人ぐらい会場にいたかと思うが、５００人対２人、つまり僕と友人以外すべて完全アウェイという状況で「オウオウオー歩いていこう」と声を震わせながら、唄い切った。テレビだったら完全に放送事故でお詫びのテロップが出るレベルだっただろう。ブーイングの中で演奏を終了後すぐに全速で逃げるように舞台から立ち去った。汗だくで「化学の実験の白い服」を脱いで床に寝ころんで悶絶した。はじめてのステージでこのような経験をしたが、あきらめず音楽を続けようと思った。そのおかげで今がある。あの時ブーイングをくださった方に心から感謝する。今も音楽が楽しいのはその人たちのおかげなのだ。