CD"Blue Virgins"

ライナーノーツを紹介させていただきます。



BLUE VIRGINS

 

元来パンクスの気質なのだろう。

甲本ヒロトに「歌」が上手くなりたい、という願望がない。

ラリーの願望も歌のテクニックに焦点が合っていない。

だからヘタをするとラリーの歌はピンボケにきこえたりする。

脳みそが柔軟なのだろう。別の意味で精神が子供なのだろう。

吸収したものは全部、自分の肉体を通して

紡ぎ出そうとする努力にはすごいものがある。

今回のラリーのアルバム「BLUE VIRGINS」をプロデュースするに

あたって、いちばん気を遣ったのは、オケ(サウンド)の完成度の高さ

だった。歌が入っていなくても充分映画のサントラとして通用する

リアルでファジーでセンチメンタルロック・サウンドがここにある。

だが、ここにあるラリーのソングライティングの才能が

紡ぎ出したものなのだ。

そこに素晴らしい味付けをしてくれた原浩貴、宮谷真人、井上徳子、

樫村進冴、マー坊、素っとびのヤス、そして、ブラザー&水戸の協力に

特に感謝したい。

今回、ラリーは彼なりに頑張った。

だから「LaMer」と「夜想曲」の2曲は

ラリーの歌がサウンドを引っ張っている⋯と思う。

彼のナイーブな側面とパンキッシュな側面がちゃんと融合した

ロック・ドキュメントとしての

クオリティーを保ちつつ、聴き手を選ばないポップなエッセンスが

このアルバムには充満している。

次回作は

10cc×トッド・ラングレン

×バート・バカラックのような

アルバムを創ろう。

そのためにも

ヴォーカルを

トレーニングしておかねば⋯。

ラリー、

次も手を抜かずに歌ってくれよ、

エルヴィス・コステロのようにね。

 

下村誠/2001

BLUE VIRGINS


RALLYをおもいだすとき、

笑った顔がフワンと浮かび上がる

まるでそれは 水に映った月のような

RALLYのもちあわせた「やさしさ」

すべてをふくんでいる笑い顔だと思う

でも笑い顔を思い浮かべたとき

水をゆらしたように

独りの寂しげなラリーがいる。

今回プロデュースをした下村誠さんは

ラリーのやさしさを全面に出せたらいい⋯

と思ったと言っていた

心のこもった作品が出来たと思う

ひとりでひざをかかえて

窓の外をながめたい気分の時なんかにいい

RALLYのかもしだす「やさしさ」と

背合わせにある「淋しさ」が

心地よく せつないのだ

 

中野亜由子/2001


BLUE VIRGINS


"あなたは海、僕の暖かい場所"。のんびりとしたメロディーに乗せて

こんな素敵な愛の言葉がさらりと歌われてしまい、僕の硬直した

モノクロームの日常は一瞬にして色彩を取り戻したのだった。

"あなたの声が僕の名前を呼んでいる。

すぐに飛んで行くよ、砂丘の上を滑る風のように"。

少年は少女をまるで防波堤から海を眺める画家のように見つけ

の美しいエメラルド色の眩しさを映す、夏の青空のような気持ち

言葉を知らぬ者が色で自らの感情を伝えようとするのとは逆

ラリーは目を塞がれた人々に水彩のことばで色を伝えようとす

"ラメール、月、グレープ・フルーツ、レインボーカフェ、

ポラロイド、黒い河のようなアスファルト"。

幼児の視線を維持し続ける魂にとって、この世界は

小さなスペクタクルに溢れていて、いつも誰かに

何かを伝えたくてしょうがない。

時に音に敏感な詩人が美声の持ち主であり、

言葉に敏感な歌い手が悪声であるのは

ボブ・ディランやトム・ウェイツを持って証明済みだが、

特に"悪声"とも言えない彼の歌唱の拙さは、

幼児が、発見したスペクタクルをなんとか言葉で伝えようとする時の

"衝動"をドキュメントしているようで新鮮である。

カントリー・ブルースやボサノヴァ、フォークなどスタイルは多様で、

ポエトリー・リーディングの部分では友部正人や佐野元春を彷彿とさせる。

そのオリジナルな言葉と絡まって、今後さらに"進化"する余地と予感を

十分に感じさせる今回のアルバムだが、個人的に圧巻だったのは、

アルバム・ラストの"夜想曲"だ。

フォークと50'sのR&Bの融合とでも言うか、最後にはまるで

アロン・ネヴィルのコーラスをバックに歌う

ジェイムス・テイラーを連想してしまった。

そして歌われているのは出口の見えない

焦燥感を抱え真夜中を漂白した経験のある者ならば

誰もが知る、恐ろしいほどにリアルな情景だ。

"ソウル・ミュージック、"スライ&ファミリーストーン"、

たばこをやめてずいぶんたつけれど、

一人ぼっちの雨の夜空に吐き出したセブンスターの煙が、

都市の精霊のようにゆっくりビルの隙間にのぼっていくのを

僕もみたことがある⋯

この文章を書いている時点で、僕は1本のカセット・テープの中の声と

言葉でしかまだラリーを知らない。

でも今夜、テープに耳をたててその心拍音を確かめるようにして

彼のうたを聴いてみた。

Blue night feeling soul music.

泣けたよ⋯

 

村田博/2001


CD "Blue Virgins Revolutions"



■1.REVOLUTIONS

映画の最初に流れるドラマチックなイントロ的でした。

■2.スターダストブルース

波の音から始まりレイドバックした感じの声で歌がはじまり中盤からブルージーなギターソロがカッコいいです。

■3.ゴットファザー

ドラムから始まりピアノを合図に曲がはじまる。昔を思い出が出で来る感じで

塩釜駅が歌の中に出てきてびっくりした。

ドラムのリズムがトレイン(列車)のリズムに思えてきた。

おやじの思い出を歌ったと知り、ぐっとくるものがありました。

そして、タイトルの意味を知りました。

■4.ラメール

ブルースハープが放浪感を醸し出し、中盤のサウンドから「ザ・バンド」を思わせる仕上がりで

聴いていると哀愁感と切なさが込み上げてきました。

■5.あいのうた

当たり前の日常が、実は大事であることを思い知らされる。

■6.レインボーカフェ

軽快なボサノバ調。

そろそろ出番だ!閑古鳥!聞いていてクスッと来ます。

そろそろ還暦 

ズィンツアン、バンツアン、病気の自慢話

なるほど、れんぼーカフェ!

■7.カントリーロード

ジョンデンバーの曲かなと聞き始めたら違った。

バックのアコーディオンのような音色がいい感じでまさにカントリーロードの雰囲気を増幅させてくれる。

空に月があり土に花がある、という感じで曲は続く・・・

■8.TRAIN KIEEP ON ROLLING

打って変わってファンキーな曲

ハイキング、トリッキング、パーキング、バイキング、

韻を踏む単語な並びご機嫌な曲でした。

■9.ポラロイド

ちょっと、けだるいジャージーな感じで始まる。

君が花火になった、夜空に消えたと歌は流れる

中盤のアコースティックギターのアドリブはギターフリークに響く

悲しい物語をさらりと歌い流し、ポラロイドのタイトルは意味深

■10.GRAPE FRUITS

イントロもなく歌から始まる。月と太陽、グレープフルーツ、月までドライブ、グレープフルーツ、歌はつづく、オルガン調のミニマムフレーズが耳に残りチェロの弦楽器などを絡めビートルズの何かの曲を連想させて、グレープフルーツと語りが心地よい。

■11.Beautiful Nancy

イントロの生ギターとオカリナトーンの音色がすが、すがしく耳に心地よい。

やがて優しげな声で歌が流れ込んできた。

歌の中で1952年、ベトナム、髪の花飾り、一発の砲弾

ショッキングな詩の内容

「1952年」「ベトナム」「ナンシー」で検索しました。

■12.夜想曲

アナログレコードのノイズから始まる。

俺の心拍音と歌は始まる。歌詞の中にスライファミリーストーンやセブンスターの懐かしい名称が織り込まれている。サックスがむせび泣くようにソロを奏でる

お前に会いたいと、そしてソウルミュークックと叫ぶように・・・

■13.虹の戦士

ミディアムテンポで軽快に始まる、

美しい地球にレインボー!

■14.native mind

軽快なロックチューンのギターから歌は始まり、ネイティブ先住民のストーリーが歌い込まれていく、そしてハモンドオルガンが鳴り響き、曲は続く・・・

 

根本正(映像カメラマン)/2023

ラリー船長との名義になる前に発売したCDのライナーノーツをここで紹介させていただきます。


 

みんな甘~い魔法でやられちまえ!ラリホー!イタズラ好きの魔法使い!

 

木暮"shake"武彦 / 2017