ショートムービー

素人が作るショートムービーが好きだ。自主製作映画ならではの、何か得体のしれない熱意のようなものが感じられるからだ。映像も何もかもが完璧に作りこまれた映画はつまらなくなってくる。通常の映画の2時間はけっこう長い。速度のある話の中に出てくる沈黙とか、沈黙の中で一気に速度が上がる展開とか、ある種のセオリーのようなものがあったりするのだろうか。先が読めると眠くなるのである。その点、ショートムービーはお話自体がとても短いのだが、なかなかの熱量で訴えかけてくる作品があるのだ。もし僕がショートムービーを撮影するなら?なんて時々空想することもある。思い出すのは、はじめてアルバイトをした昭和の終わりごろ。スーパーマーケットの店長がとても気弱な人だった。アルバイトの僕に敬語を使う方だったが、ある時から店長としての威厳を示せと言われてきたのか、僕が背中を向けると「丁寧にやれ!」と急に強い口調になり、振り返ると「丁寧に、お願いしまっす!」と背筋を伸ばして頼んでくる。また僕が背中を向けると「おい!丁寧に!」と、いかにも威厳を示すため、わざと大声で命令するのだった。ああ、あの店長とショートムービーで「だるまさんが転んだ」がやりたい。僕が鬼をして見てない間は「バイト!丁寧にやれ!」と威張ってもらい、僕が振り返ると、店長が凍りつく。鬼の僕は店長の目の前に近づき至近距離で「いま、何て言ったんでしょうか」と低い声でつぶやく。店長、フリーズ。その繰り返しを永遠に撮りたい。鬼は最後に店長に「賞味期限の早いものを前に置く、どんなにやっても、客もお見通しなんですよ。後ろから取るでしょう?」との低い声。店長は冷汗をかきながら答える。「そんなことを言っても、古いものから買ってもらったほうが絶対にいいに決まってるでしょう?」と。見ている人がなんだよこれは??と思った時に「ベイビーリーフ」という吾輩のオリジナル曲が大爆音で流れる。そんなミュージックビデオのようなエンドロールが思わず浮かんできてしまうのだ。