モーニング

早朝に車で走っていると、びっくりするような場面にでくわすことがある。きっと24時間営業の薬局に買い物にいった帰りなのだろう、道路の真ん中でパジャマにニット帽にサングラス、ジャケット、サンダルで歩いているおばあさんがいた。そのコーディネイトはブエナビスタソシアルクラブバンドのメンバーかのような威風堂々感があり「新しい」と思った。かなり道路の真ん中を歩いていたので安全に家に帰れるよう祈りながら車を走らせた。かつてブラックバージンズというアルバムを作った時に、とても参考になったCDがある。デビッドグレイというミュージシャンのA New Day at Midnightというアルバムだ。これはなぜか夜明けに聴きたくなる。デビッドグレイはアパートで宅録をしてアルバムを作っていると聞くが、コールドプレイのメンバーがサインほしさにレコード屋に並んで購入したのだとのエピソードが微笑ましい。初期の作品はアパートの宅録で生ドラムを叩けないので基本的にはリズムマシン。リズムマシンではあるが、絶妙に彼の楽曲とリズムマシンが溶け合ってものすごくセンスのいいアルバムになっている。ブラックバージンズも大いに彼の作品から励ましを受け制作したのだが、発売後に「ずっとリズムマシンなので抑揚がないね」とおっしゃる方もいた。魚の小骨が喉に引っかかったようにたまに思い出すこともあるのだが、自分がギターの音が特に聴きたくて買ったのに、今回はギターはなしでオーケストラのアレンジでした!というような、その方にとってはハズレと感じてしまうようなことが作品を作ると生じる、とのことを学ぶことが出来た。僕はデビッドグレイのアルバムは正直、生ドラムのアルバムもあるがリズムマシンで制作されたアルバムの方をいつも気に入って聴いている。特にA New Day at Midnightというアルバムは最高なのだ。早朝に出会ったおばあさんは無事に家に帰れただろうか。デビッドグレイの音楽を聴きながら走行中だったが、道路のド真ん中にいるおばあさんとその背景にある夜明けの景色とデビッドグレイの音楽との調和がとても美しくて、まるで異国にいるような気分になった。