ワウ

ワウは、静かな部屋で弾いていると地味にうるさい。カチャコチョ、カチャコチョと足踏みするときの機械の音が響くからである。ソウルフルなバンドのギターボーカルがワウを踏みながらセミアコなどを鳴らしているのはめっちゃかこっこいい。アフロヘアでグルービィな音楽にワウを踏んで、すっげえかっこいい音楽を大爆音でやっているなんてことを想像しながら、部屋でワウを踏む。ひとり、ワウ!ひとり、ナウ!みたいだが。ワウを踏む時、リズム(ドラムやベース)がないとなんかむなしい。俳句を書く時に紙がないようなものだ。仕方なくリズムマシンでワウを踏む練習をしていると、右手と足がずれることがたまにあり、どこにいるのか宇宙遊泳のような気分になることがある。ぴったり足も手も歌もできる人はすごいなあと思いつつ、僕はずれてなかなかうまくできない。リズムやっぱないほうが僕はかっこいいワウを弾けるかも、ギターリスト的にかっこよく弾こう!と今度は静まった部屋で思い切りチョーキングをしてワウをゆっくり弾いてみる。すると、みょうに静かな部屋にギターソロが決まった!と思ったそのあと、刀をさやにおさまるかのように、ワウのカチャっと踏んだ時の音が、静かなクラシックコンサートの会場でヘックショーン!みたいに響くのである。どうしたらよいか考えたあげく、ワウを箱にしまうことにした。アンプについているオートワウでワウを踏んでる気分でギターを弾くのである。これは車の運転で言えばオートマのようなものなのであるが、僕は器用じゃないんだなあと箱に眠るワウをみながらためいきをつくのである。