トラベルギター

自動車の免許は山奥の合宿に学生時代に行ったのだが、その当時とてもギターが弾きたくてすごくウズウズしていた。きっと運転実技をしながら先生にそんなお話をしたのだろう。先生が合宿所に夜にやってきて、「よかったら弾いてよ。このギターあげるから」とフォークギターを持ってきてくれた。いま思うと、なんて優しい先生だったんだろうと思う。そのギターは大事に使っていたのだが移動の時にひびが入ってしまい、記念にしばらく持っていたのだが弾けなくなってしまい手放して数十年が立ってしまった。エピフォンのアコギをトラベルギター用に弾いた時、「あれ、なんだろうこの感じは?」と思った。合宿所に先生が持ってきてくれたギターに音がとても似ているのだ。記憶というのは不思議だなあと思った。みかんも冬にたくさん食べるときはみかんはみかんと認識があるが夏にぜんぜん食べなくてもみかんの味は忘れてないんだなと、冬には思い出せる。エピフォンを弾いた時、玄関先に立っている先生の顔が浮かんだ。ただ喜ばせたくて、届けてくれたのだろう。あの夜に「ライダーズドライブ」という曲を先生からもらったギターで書いた。ライダーズドライブも、いつかラリー船長バンドで演奏していきたい。