カナヘビ探検隊

 今日、僕は道を普通に歩いていた。すると、前方に若者10人ほどのグループが楽しそうに笑い声を響かせながら進んでいた。僕は先を急いでいたのに「ちょっとすみません」と言いながら早歩きで2人ほど抜かしたあたりで、道がまるでジャングルの奥地みたいに狭くなり、けもの道となってしまった。僕は先頭から数えて8番目にいたが道が狭くて前の人を追い越せない。ふと、その時だ。先頭の若者が突然、藪を指さして「わ!カナヘビだ!」と叫んだのだ。

 その瞬間、先頭から点呼をとるように「カナヘビだ!」「カナヘビだ!」「カナヘビだ!」と伝言が後ろまで伝わってきた。正直、関係のない通行人の僕も「カナヘビだ!」と言いそうになったが、カナヘビってただの小さいトカゲみたいなやつじゃないか。蛇ならともかく、まったく怖くないもないだろうと無言でスルーした。ところが先頭の若者はどうやら初めてカナヘビを見たらしく、「すげぇ!もっといるかな!カナヘビ~!」と、まるで珍獣ハンターのように興奮している。後ろの若者たちもそのテンションに引きずられながら、藪をじっと見つめ進んでいく。そして、全く関係ない僕までもが、歩きながら道の脇の藪をじっと見つめてカナヘビを探していることにふと気づいてしまった。もう、なんなんだこの状況は・・・?!帰宅してから「こういうの、なんて言うんだろう?」と疑問に思い、AI先生に聞いてみた。すると、返ってきた答えは「感情伝染」。要するに、他人の感情や行動が自分に伝染しちゃう現象らしい。カナヘビを追い求め、探している若者たちのワクワクが、無意識のうちに僕にも伝染していたってことだ。そういうの、日常ではけっこうあるのかもしれない。感情って面白いもんだなと実感しながら、結局カナヘビ探検に知らずに参加した散歩道なのだった。