SPレコード

 SPレコードというレコード盤がある。LPやシングルのレコードが出る前、蓄音器があった頃の時代の分厚いレコードなのだが、ひょんなことからSPレコードを再生できる機械が手に入り、驚いたことがある。当然のことながら電気を使わずにレコードを聴けるというものなのだが手巻き式でレコードを聞く前にハンドルを手で回す。音量を調整するものなどはなく、機械にSPレコードを乗せる時は本当にドキドキした。あまりに音量がデカすぎても困るし、小さすぎても物足りなさがあるだろう。僕が聴きたいのはSPレコードの「賛美歌」なのだが、SPレコードは戦前戦後なので賛美歌は本当に昔からあるのに入手するのは本当に難しいジャンルのようでもある。国内にはSPレコードの専門店もあり、在庫を確認したところものすごい数のSPレコードの中に賛美歌はわずか数枚といったところでもあった。歴史的背景から考えても日本国内に輸入された、あるいは国内でレコーディングされた約100年前の賛美歌のSPレコードを探すというのは難しい領域のものなのかもしれない。しかし、見つけにくいというのはかえって気持ちを燃え上がらせるものもあり、そのわずか数枚のSPレコードの賛美歌の、日本、英国、アメリカのを聴き比べてみた。録音が1919年とかのものである。今から約100年前の音楽を聴き比べても、日本、英国、アメリカの音質の違いがなんとも言えない感じであるのだった。日本は教科書的、英国はおごそか、アメリカはどこか大らかな感じなのである。この時代の人たちは電気がなくても手巻きの機械でレコードを聴いていたのだ。肝心の音量は部屋で聴くのに十分だ。そして、電気を使わないから野外でも楽しめる。僕は、現代の音楽だけが音楽だとは思わない。蓄音器ならではの深みや味わいがあるなあと思いつつ、電気がない時代に行燈などの中で聴く蓄音器はさぞ素晴らしかったのだろうと思いを馳せながら聴いている。賛美歌は合唱だけではなくオルガンやオーケストラもある。英語だけではなく、ヘブル語の賛美歌のSPレコードもあると聞く。ジャズやロックよりもちろん古くからあるのだが、僕には新しい発見がある、とても大切な音楽なのだ。